民法の学習方法は?


民法はどのように学習したらよいのですか?


最初に学習目標を決める


民法BoyLearningを学習するに当たって,最初にすることは,民法学習の目標を決めることです。到達目標がわからなければ,何を学習すべきか,どのように学習すべきかもわかりません。

民法は,市民生活の基本法といわれるように,私たちが,生活していく上で必要なルールを規定しています。たとえば,買物でのトラブル,事故を起こしたときの 責任の取り方,結婚の方法,離婚の原因,相続にまつわるトラブルなど,さまざまなトラブルを解決する際に,解決の指針となるルールが,民法に規定されてい るのです。


学習目標を決めておかないと,学習の途中で挫折することが多い,民法の学習の場合は特に多い。


まじめな人は,民法の教科書を条文と判例を参照しながらよく読めば,民法を理解することができるのであり,それが民法学習の王道だと考えているかもしれません。

しかし,それでは十分ではありませんし,学習の途中で,理解が困難な箇所で挫折することになるように思われます。多くの人が,民法の学習に挑戦しながらも,途中で挫折しているのは,世間で言われている学習方法に問題があるからだと,私は考えています。

s-DSC01763学習上の困難な問題に遭遇した場合に,それを乗り越えることができるかどうかは,学習目標が明確であるかどうかにかかっています。学習目標が明確な人は,困難な問題にぶつかっても,なんとかそれを乗り越えることができますが,目標が明確でないと,そこで挫折してしまいます。

写真は,法曹を目指して法律の学習に励んでいる人たちの学習方法のひとつです。事実関係を図示し,その事実にどのような条文が適用されるのかを考えながら,議論をしています。

民法の学習に先立って,民法の学習目標を設定しましょう。それが,民法学習の第一歩です。


法律学すべてに共通する学習目標とは何か?


民法の学習目標とは何か。それは,すべての法律の学習に共通することですが,民法の教科書や判例や文献を読んでいて,その問題の解決が求められたときに, 「問題にどの条文を適用すると,その問題が解決できるのか」,すなわち,その「問題は,何条と何条とを適用するとうまく解決ができるのか」を明確に意識できるようになることです。

紛争がこじれて,裁判沙汰になった場合,裁判官は,憲法76条3項に従って,憲法又は法律の条文に従って裁判をしなければなりません。

    • 憲法 第76条
      すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される

Judgmentつまり,紛争を解決するために,出るところに出れば,最後の判断は,憲法か民法をはじめとする法律の条文によって解決されるのです。民法に関する事件は,それが,どのような事件であっても,民法の具体的な条文の解釈を通じて解決されるのです。

そうだとすると,私たちが民法を学習する目標は,明らかです。つまり,民法の学習目標は,以下の通りです。

問題が生じた場合に,その問題に適用されるのは,民法のどの条文かを言えるようになること

そのような最終目標である高度な能力を身につけるには,どうすればよいのでしょうか。


民法の学習目標を実現する方法とは?


問題が生じた場合に,その問題を解決するために適用される条文を言えるようになるためには,次のプロセスを経ることが必要です。

  1. 民法の条文の意味と,その条文がどのような事例に適用されたかを知る必要があります。
  2. 逆に,事実が明らかになった場合に,その事実に適用されるべき条文を言えるようになる必要があります。

外国語の学習プロセスと似ている


こ のプロセスは,外国語,たとえば,英語の学習のプロセスによく似ています。英語の学習の場合には,まず,英文を読んだり,聞いたりして,その意味を理解す ることが大切です(英文和訳)。しかし,それだけでは,英語を使いこなすことはできません。自分の伝えたいことを英語で話したり,書いたりすること(和文 英訳)ができなければ,英語をマスターしたことにはなりません。


結論


民法の学習も,実は,英語学習における英和・和英の関係と同じことなのです。民法の学習においても,以下のプロセスを経ることになります。

  1. rule_based_j1まず,条文の意味を知り(条文の解釈),その条文がどのような事例に適用されてきたのかを知ること(判例研究)からはじめなければなりません(トップ・ダウン式の思考方法)。しかし,それだけで満足してはなりません。それとは逆方向の推論(ボトム・アップ式の思考方法)ができるようにならなければなりません。
  2. つまり,事実が明らかになった場合(事実認定)に,その事実にどの条文が適用されて(法の適用),どのような解決を導くことができるかを説明すること(判決予測)ができるようにならならないのです。それができるようにならないと,民法をマスターしたとはいえないのです。

このように,民法の学習目標をしっかりと理解できれば,その目標を実現するために何をしなければならないのか,どのような順序で学習をしなければならないのかがわかります。

教科書を読む場合に,教科書の内容だけを理解して,それで終わりと思う人は,決して,民法をマスターすることはできません。教科書を読む意味は,個々の条文 の意味を知り,それらの条文がどのような事例に適用されているのかを知るためです。学習目標は,実は,その先にあります。

教科書で学習した知識を総動員して,教科書には書かれていない新しい具体的な問題が与えられたときに,その事実にどの条文が適用されるかを予測できるようになる能力を養うことが必要なのです。

学習目標を持っている人は,教科書を読むときも,条文がどのように適用されるかに注目します。そして,教科書を理解するだけにとどまらず,教科書に書かれていない問題について,どの条文が適用されるのか,これまで習った条文でうまく解決できるのかどうかを常に考えるようになります。

そういう学習を続けていく人だけが,民法の学習目標を達成し,民法をマスターすることができるのです。