アウトラインプロセッサ(OlivineEditor)を使った民法の体系化の試み(総則まで)
民法は,パンデクテン方式という編別方式を採用しています。
このパンデクテン方式というのは,各編,各条文の共通部分を抜き出して,総則として,前に出してまとめるという方式であり,コンピュータのプログラムに似た構造を有しています。
すなわち,各編(たとえば,物権編とか,債権編の契約の類型に基づいた「契約の流れ」とか)がメインルーティンであり,民法総則がサブルーティンに該当すると考えることができます。
従来の体系化の試み(静態的な体系図)
このため,民法の体系を図式化すれば,民法の全体像がわかりやすくなると考え,たとえば,以下のような図を作成してきました。
左の図のように,もう少し簡潔に表示することもできますが,これでは,体系図としては,貧弱すぎます。
しかし,これらの図は,いずれにせよ,全体像を示すこと以外の機能を持ちません。この体系に,条文や文献,判例等を追加しようとすると,図画途方もなく大きくなり,一つの図として示すことができなくなります。
もちろん,以下に示す,民法総則の全体像は,右の図のように簡潔に示すことができますし,それぞれの枝葉にリンクをつけることで,かなり深くまで表示することができるのですが,条文の内容,立法理由,学説,判例まで表示することはできません。
アウトラインプロセッサを使った動態的な体系図
しかし,アウトラインプロセッサを使って,民法を体系化すると,レベル1のノードだけ見せて,後は折りたたんだり,ある部分について,すべてのレベルまで展開したりすることができます。これは,あたかも,Googleマップで世界地図から,日本地図,分県地図,住宅地図のように,概略図から,詳細な図まで,自由自在に行き来できるようになるのと同じです。
以下の図は,アウトラインプロセッサを使って作成中の民法の体系をWindowsのディレクトリのレベルまで展開したものです。Windowsのコマンドプロンプトで,”tree”というシステム述語を用いると,以下のような,ツリー構造を示してくれます。
Structure of Civil Code of Japan(民法民法典の体系)
├─1 Property law(財産法)
│ ├─Part1 General provisions(第1編 総則)
│ │ ├─Chapter1 General principles(第1章 通則)
│ │ │ ├─Section1 Private and public interests(私権と公共の福祉との関係)
│ │ │ ├─Section2 Standard of act(私人の行動原理)
│ │ │ │ ├─ Art. 1 al. 2 Principle of good faith(信義則)
│ │ │ │ └─ Art. 1 al. 3 Prohibition of abuse of rights(権利濫用の禁止)
│ │ │ └─Section3 Aim and Interpretation of civil law(民法の目的と解釈)
│ │ │ └─Art. 2 Dignity and equality(個人の尊厳と両性の本質的平等)
│ │ ├─Chapter2-3 Person(人)
│ │ │ ├─Chapter2 Natural person(第2章 自然人)
│ │ │ │ ├─Secction1 Capacity to hold rights(第1節 権利能力)
│ │ │ │ ├─Section2 Capacity to legal act(第2節 行為能力)
│ │ │ │ │ ├─1. Majorities(成年)
│ │ │ │ │ ├─2. Minors(未成年)
│ │ │ │ │ ├─3. Guardianship(成年後見)
│ │ │ │ │ ├─4. Curatorship(保佐)
│ │ │ │ │ ├─5. Assistance(補助)
│ │ │ │ │ └─6. Right of counterparty(制限能力者の相手方の権利)
│ │ │ │ ├─Section3 Domicile(第3節 住所)
│ │ │ │ ├─Section4-1 Management of absentee property(第4節 不在者の財産管理)
│ │ │ │ ├─Section4-2 Adjudication of disappearance(第4節 失踪宣告)
│ │ │ │ └─Section5 Presumption of simultaneous death(第5節 同時死亡の推定)
│ │ │ └─Chapter3 Juridical person(第3章 法人)
│ │ │ └─1. Establishment of juridical person(法人の設立)
│ │ ├─Chapter4 Object of right(第4章 物)
│ │ │ └─Clasification(物の種類)
│ │ │ ├─1. Tansible or Intangible(有体物と無体物)
│ │ │ │ └─Art. 85 Tangible(有体物)
│ │ │ └─2. Principal or Appurtenance(主物と従物)
│ │ │ └─Art. 88 Fruits(元物と果実)
│ │ ├─Chapter5 Legal acts(第5章 法律行為)
│ │ │ ├─Section1 General provisions of legal acts(第1節 総則)
│ │ │ ├─Section2 Manifestation of intention(第2節 意思表示)
│ │ │ ├─Section3 Agency(第3節 代理)
│ │ │ │ ├─1. Condition of egency(代理の要件)
│ │ │ │ ├─2. Sub-agency(復代理)
│ │ │ │ ├─3. Conflict of agency(利益相反)
│ │ │ │ ├─4. Apparent agency(表見代理)
│ │ │ │ └─5. Unauthorized agency(無権代理)
│ │ │ ├─Section4 Void or Invalidity of legal acts(第4節 無効及び取消し)
│ │ │ │ ├─1. Void(無効)
│ │ │ │ └─2. Invalidity(取消し)
│ │ │ └─Section5 Conditions and Time limit(第5節 条件と期限)
│ │ │ ├─Conditions(条件)
│ │ │ └─Time limit(期限)
│ │ ├─Chapter6 Calculation of period(第6章 期間の計算)
│ │ └─Chapter7 Prescription(第7章 時効)
│ │ ├─Section1 General provisions(第1節 総則)
│ │ │ ├─1. Effect and waiver(時効利益とその放棄)
│ │ │ ├─2. Interruption(時効の中断)
│ │ │ └─3. Suspension(時効の停止)
│ │ ├─Section2. Acquisitive prescription(第2節 取得時効)
│ │ └─Section3. Extinctive prescription(第3節 消滅時効)
│ │ ├─1. Long term(長期消滅時効)
│ │ └─2. Short term(短期消滅時効)
アウトラインプロセッサの中身には,この下に,条文,文献,判例を順次追加しているのですが,そこまで展開すると,詳細に過ぎるので,ここでは,ディレクトリができている部分に限定して一覧をしています。
この後も,アウトラインプロセッサで民法の体系化の作業を進めていきます。