クリス・ギレボー,本田直之(訳)『1万円起業-片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法』飛鳥新社 (2013/9/11)
原題は,”The $100 Start up”(100ドル起業)です。若者だけでなく,定年退職を控えた人々にとっても,起業の敷居を低くしてくれる本です。
著者によると,本書のタイトルの「1万円起業」とは,「貯金はいらない。会社を辞めなくても始められる。主婦にも向いている。今以上の収入と思い通りの暮らしが実現できる方法」だとのことです。
確かに,これまでなら,1万円(100ドル)で起業するなどということは不可能でした。しかし,インターネットの普及によって,企業環境は,以下の理由によって,1万円の資金があれば,一人でも商売が成り立つほどに,劇的に変化していると思われます。
- 第1に,従来は,店舗を構えるため等の初期投資が必要でしたが,現在では,パソコンとインターネットでサイトを開設する金額があれば,ネットショップを構えることが可能です。
- 第2に,従来は,顧客を誘引するための広告費が必要でしたが,インターネット空間では,広告費用が不要となるばかりでなく,むしろ,人気のあるサイトを運営すると,広告料収入を得ることができるという点で,初期投資がほとんど不要となっています。
- 第3に,人件費ですが,従来は,コンピュータができることに限界があるため,人手によって店舗を運営する必要がした。しかし,現代において は,人工知能(AI)の発展に見られるように,店舗運営における経理,顧客管理等の複雑な処理をコンピュータが自動的に行うことができるようになっており,年商が 億単位の店舗運営を一人で切り盛りしている例も少なくありません(中村あきら『東京以外で,1人で年商1億円のネットビジネスをつくる方法』朝日新聞出版(2014)が参考になります)。
しかも,コンピュータは,自動運転が可能なので,起業の準備であ れば,会社勤めをしながらでも可能です。したがって,会社で実社会での経験を積んでから,ネット事業に転進することも可能です。そして,ネット事業が軌道に乗れば,在宅勤務も可能であり,世界中を移動しながら事業を継続することもできます。つ まり,自分の思うとおりの時間と場所で自分の好きな事業を行うことができるのです。
それだけではありません。勤めている会社の上司や同僚や部下に,理不尽な扱いをされたり,会社の経営方針が自分の生き方に反する方向に進み始め,自分の力ではどうすることもできないと思ったりしたときに,迷わず,辞表を出して,自立できるようになるとしたら,とても素敵なことだと思います。
しかも,そのような事態が生じることは,会社にとってもよいことです。なぜなら,潜在的に自立する能力を持つ人が会社の構成員の過半数を超えるようになれば,会社が経営方針を誤れば,みんな辞めてしまうということになるため,会社の不正や腐敗が激減することが期待できるからです。